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『和尚と水飴』

 むがしむがし、
 山の麓さ、和尚と二人の小僧がいだったんだど。
 和尚は、いっつも法事さ行ぐどぎ、
「お前んだ、おれ留守んどぎに、押入れさ入ってだ水飴食わんにぇぞ。子供食うど死んでしまうがら」
て教えで出がげっかったんだど。小僧ら、
「はでなぁ、和尚様いっつも棒さくるくるくるんで舐めったもんだも、なにがうまいものでねえながなあ」
てしゃべってだったんだど。
 ほして、又和尚様法事さ行ったどぎに、和尚様の部屋さ入って、押入れ開げでみだど。
ほしたら、そごさちっちゃこい瓶あって、蓋開げでみだらば、水みでなもの入ってだっけども。
 今度ぁ、二人の小僧は箸出してきて、和尚様の真似して、箸さくるくるくるんで、舐めでみだんだど。
 ほしたら、それがうんめくてうんめくて、ちょっと舐めでみるつもりが、瓶ん中、空になるまで食ってしまったんだど。
「はで、困った。みな食ってしまった。和尚様にごしゃがれる」
って二人の小僧は考えだごんだど。
ほしてら、おっきい方のの小僧が、
「ええごど考えだ、待でよ…」
って言って、和尚様が大事に床の間さ飾ってだ皿持ってきて、バーンって床さ落して割ってしまったなだど。
そのうぢ和尚様帰ってきたらば、
「お前も泣げ泣げ」
なて言って、二人で、
「アンアン、アンアン」
て泣ぎはじめだんだど。
和尚様は何事だべど思って、
「何したごんだ」って聞ぐど、
おっきな小僧が、
「和尚様いねうぢに掃除すっかど思って、床の間の皿出してきたらば、手すべって割ってしまったなだ。んだがら、死んでお詫びすんなねど思って、和尚様いっつも舐めっと死ぬって言ってだ押入れの水飴舐めだんだ。んだげんど、なんぼ舐めでも死なんにぇくて、もうみなねぐなったじば、まだ死なんにぇなよ。アンアン、アンアン」
て言うっけんだど。和尚は、
「いや、こりゃぁ小僧にやらっちゃなぁ、小僧だがらって嘘付ぐもんでねぇなぁ」
って思って、それがらは、小僧も和尚も何でもおんなじようにして暮らしたんだど。
 とーびんと。

山形弁訳

『和尚と水飴』
  むかしむかし、
  山の麓に、和尚と二人の小僧がいたんだと。
  和尚は、いつも法事に行く時、
「お前ら、おれが留守の時に、押入れに入っている水飴食ったらダメだからな。子供が食べると死んでしまうから」
て教えて出かけるんだと。小僧ら、
「はてなぁ、和尚様はいつも棒にクルクルくるんで舐めてるんだから、何かうまいものなんじゃないかなぁ」
てしゃべってたんだと。
  そして、また和尚様が法事に行ったときに、和尚様の部屋に入って、押入れ開けてみたんだと。
そしたら、そこに小さい瓶があって、蓋をあけてみると、水みたいなものが入ってたんだと。
  今度は、二人の小僧は、箸を出してきて、和尚の真似をして箸にクルクルくるんで、舐めてみたんだと。
  そしたら、それがうまくてうまくて、ちょっと舐めてみるつもりが、瓶の中が空になるまで食ってしまったんだと。
「はて、困った。全部食べてしまった。和尚様に怒られる」
って二人の小僧は考えたんだと。
そしたら、大きい方の小僧が、
「いいこと考えた、待てよ…」
って言って、和尚様が大事に床の間に飾っていた皿をもってきて、バーンって床の上に落して割ってしまったんだと。
 そのうち和尚様が帰ってきたら、
「お前も泣け泣け」
なんて言って、二人で、
「アンアン、アンアン」
て泣き始めたんだと。
和尚様は何事だろうかと思って、
「どうしたんだ」って聞くと、
大きな小僧が、
「和尚様がいないうちに掃除しようかと思って、床の間の皿を出してきたら、手がすべって割ってしまったんだ。だから、死んでお詫びしなきゃならないと思って、和尚様いつも舐めると死ぬって言ってた押入れの水飴を舐めたんだ。だけど、いくら舐めても死ねなくて、もう全部なくなったのに、まだ死ねないんだ。アンアン、アンアン」
て言ったんだと。和尚は、
「いや、こりゃ小僧にやられたなぁ、小僧だからって嘘付くもんじゃあないなぁ」
て思って、それからは、小僧も和尚もなんでも同じようにして暮らしたんだと。
  とーびんと。





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