山形の方言と山形県の温泉や観光情報

山形弁(置賜方言)の昔話と山形県情報。方言で語る昔話で山形を感じよう!


  • 山形弁の訳を見る
  • 昔話通常バージョン
  • 昔話テキストバージョン

『笛吹き沼』

 むがしむがし、最上川沿いの村近ぐさ沼あって、そご通りかがった侍が、近ぐの岩さ腰掛げで笛吹いったんだっけど。
 美しい笛の音で、辺り一面に澄み渡るような笛の音だったんだど。
 侍が、その笛吹ぎ終わったころ、いづの間にが、美しい娘立ってだったど。
 ほして、もう一回笛吹いでけろって頼むなだっけど。
 もう一回、侍が笛吹ぐど、娘は涙を流しながら、聞いったったど。
 娘は、笛吹ぎ終わった侍さ、
「実はおれ、この沼の主だげんど、おれどずっと一緒にこさ居でけんにぇが」
って言うのだっけど。
 ほだげんど、主命で京さ上んなね侍は、
「来年に帰って来っから、それまで待ってでけんにぇが」
って言って京さ上ったんだど。
 それがら、1年後、侍は役目終えで戻っこどになったなだど。
 ほだげんど、侍は、娘さは会わねように、そのまま最上川下っこどにしたんだど。
 侍の乗った舟は川の流れさのって進んでだったんだげんど、沼の近ぐさ来たら舟が止まって動がねぐなったなだど。
 舟の客らもたまげで騒ぎ始めだんだど。ほして川底のぞいだ船頭が、
「誰が沼の主に見込まっちゃ人いだみでだ。その人が舟降りねど舟進まねな」
って言うのだっけど。
 もう侍は覚悟して川さ飛び込んだなだど。ほしたら、侍は沼の方さ消えでったなだど。
 それがら月夜の晩になっと沼の底がら美しい笛の音が聞こえるようになって、この沼は「笛吹き沼」って呼ばれるようになったなど。

 どーびんと。

山形弁訳

『笛吹き沼』
 むかしむかし、最上川沿いの村の近くに沼があって、そこを通りかかった侍が、近くの岩に腰かけて笛を吹いていたんだと。
 美しい笛の音で、辺り一面に澄み渡るような笛の音だったんだと。
 侍がその笛を吹き終わったころ、いつの間にか、美しい娘が立っていたんだと。
 そして、もう一回笛吹いてくれって頼むのだっけど。
 もう一回、侍が笛を吹くと、娘は涙を流しながら聞いていたんだど。
 娘は笛を吹き終わった侍に、
「実は、私はこの沼の主なのだけれど、私とずっと一緒にここに居てくれないか」
って言うのだっけど。
 けれども、主命で京に上らなければならない侍は、
「来年に帰ってくるから、それまで待っててくれないか」
って言って京に上ったんだと。
 それから、1年後、侍は役目を終えて戻ることになったのだと。
 けれども、侍は、娘には会わないように、そのまま最上川を下ることにしたんだと。
 侍の乗った船は川の流れに乗って進んでいたんだけれど、沼の近くに来たら舟が止まって動かなくなったのだと。
 舟の客たちもびっくりして騒ぎ始めたんだと。そして川底を覗いていた船頭が、
「誰か沼の主に見込まれた人がいるみたいだ。その人が舟を降りないと舟は進めないな」
って言うのだっけど。
 もう侍は覚悟をして、川に飛び込んだのだと。そしたら侍は沼の方に消えて行ったのだと。
 それから月夜の晩になると、沼の底から美しい笛の音が聞こえるようになって、この沼は「笛吹き沼」と呼ばれるようになったのだと。
 どーびんと。
 どーびんと。





○山形弁(置賜方言)の昔話

牛蒡と人参と大根 | 雪女郎 | 百足の医者迎え | 大鳥と大海老と大鯨 | 蛙の恩返し | 蟻と蜂の拾い物 | 金の斧・鉄の斧 | 猫が十二支に入らぬ訳 | 部屋の起こり | 笠地蔵 | 金仏木仏 | 豆腐田楽と和尚さま | 一粒の米 | 猫の釜ぶた | 馬鹿婿と団子 | 飴買い幽霊 | お月様とお日様と雷様 | うば捨て山 | 金持ちと貧乏人 | 三枚のお札 | サトリの化物 | 貧乏の神 | 馬鹿婿ばなし | 和尚の頭に小便 | 長者婿 | [オ]の字 | 稲のはじまり | あやちゅうちゅう | 人柱 | おぶさりたいの杉の木 | 飽きたの三吉 | 上杉様の鴨とり | 唐辛子売りと柿売り | 沼の貸し膳 | しらみの質入れ | 空巣 | 螺とカラス | カラスと螺の話 | おれの住まいと同じ | 古屋の雨漏り | 塩っぱい爺さん | 猫の宮 | 和尚と水飴 | 緋々退治 | 炭焼き吉次 | お正月 | 石肥三年 | 鳥海山の手長足長 | マムシ小判 | 河童と彦助 | 四本目の足 | 米塚山と糠塚山 | 夢買い彦市 | あこや姫 | 蛙とネズミ | 貧乏長者 | 食わず女房 | 狐の恩返し | 玉虫沼 | お釈迦様と鬼 | 雪女と若者 | 猿のお尻はまっかっか | たぬきと若者 | 水の種 | 娘の百夜まいり | 殿様の一文銭 | 提灯お化け | 竜神の立て札 | ばば皮 | | 片目の爺さまと狐 | 鬼の面 | 笛吹き沼 | もぐらの婿さがし | 平種子柿 | 猿羽根の地蔵様 | きつねの恩返し | べんべこ太郎 | 子産石 | 山姥と名刀 | 猫絵十兵衛 | 半ごろしの御馳走 | 鶴と亀