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『長者婿』

 むがしむがし、あるどごさ長者様いだっけど。
  長者様の家さ、めんごい一人娘いだったそうだ。
  その娘ぁ、昔話が大好ぎで大好ぎで、飽ぎるごどしゃぁねごんだど。
  長者様は、めんごい娘に、昔話いっぺ知ってだ婿もらって呉っぺど思って探しったけど。
  ほうしたら、一人の男が訪ねできて、
「俺は飽ぎるほど語られる」
と名乗り出たんだと。ほして語ってもらったどごろぁ、語っても語っても娘は飽ぎねくて、男はとうとう逃げで帰ってしまったっけど。
  ほしたら又、一人の男が訪ねできて、
「俺も飽ぎるほど語られる」
というもんだがら、語ってもらったんだど。
  これも又、語っても語っても、娘は飽ぎねくて、語り尽ぐしてしまったんだど。
  男は、語り尽ぐしてしまったし、語り疲っちゃしはぁ、しばらぐ、考えだごんだど。
  ほうして、じぎに暖がくなっと蛇ででくんなぁ、ど思って語り始めだど。
「むがあしむがあし、大光院の大きな木の根っこさ、蛇の穴あったっけど、そっから蛇ぁでできて、
  今日ものろのろ、のろのろのろのろ
  明日ものろのろ、のろのろのろのろ
  明後日ものろのろ、のろのろのろのろ
  やなさっても、のろのろ、のろのろのろのろ
  毎日のろのろ、のろのろのろのろ
  のろのろのろのろ、のろのろのろのろ」
ど、ずっとのろのろ語って聞がせだど。
のろのろがあんまり続ぐもんだがら、
長者の娘はとうとう、
「飽ぎだはぁー」
ど言って、若者は長者様の婿にもらわっちぇ、幸せに暮らしたんだどうだ。
  ほだがらなぁ、何ごどさも知恵ば働がして、根気強ぐしんなねもんなんだど。

 とーびんと。

山形弁訳

『長者婿』
 むかしむかし、あるところに長者様がいたそうな。
  長者様の家には、かわいい一人娘がいたんだそうだ。
  その娘は、昔話が大好きで大好きで、飽きることを知らないんだと。
  長者様は、かわいい娘に、昔話を沢山知っている婿を貰ってあげようと思って探してたんだと。
  そうしたら、一人の男が訪ねてきて、
「俺は飽きるほど語られる」
と名乗り出たんだと。そして語ってもらったところ、語っても語っても娘は飽きなくて、男はとうとう逃げて帰ってしまったど。
  そしたらまた、一人の男が訪ねてきて、
「俺も飽きるほど語られる」
というものだから、語ってもらったんだと。
  これもまた、語っても語っても、娘は飽きなくて、語りつくしてしまったんだと。
  男は、語りつくしてしまったし、語り疲れたしではぁ、しばらく、考えたんだと。
  そうして、じきに暖かくなってくると蛇が出てくるなぁ、と思って語り始めたど。
「むかあしむかあし、大光院の大きな木の根っこに、蛇の穴あったっけど、そっから蛇がでてきて、
  今日ものろのろ、のろのろのろのろ
  明日ものろのろ、のろのろのろのろ
  明後日ものろのろ、のろのろのろのろ
  やなさっても、のろのろ、のろのろのろのろ
  毎日のろのろ、のろのろのろのろ
  のろのろのろのろ、のろのろのろのろ」
ど、ずっとのろのろ語って聞かせたんだと。
のろのろがあんまり続くものだから、
長者の娘はとうとう、
「飽きたー」
って言って、若者は長者様の婿に貰われて、幸せに暮らしたんだと。
  だからな、何事も知恵を働かせて、根気強くしなければならないものなんだと。

  とーびんと。





○山形弁(置賜方言)の昔話

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